簪彼女。
そんなことを考えて、心拍数があがるのを感じた。
「な、赤松。今日さ、俺と一緒にスリッパ借りようぜ。おそろ、ってヤツ」
私の下駄箱を背中にして、高橋くんがそう言った。
「え、な、なんで……?」
「いーから、さ。職員室に借りに行こう、ほら」
そう言うや否や、高橋くんは私の脱いだ靴をさっと下駄箱にいれて、職員室へと歩き出した。
途中、振り返って、
「おい小野。先に教室行っとけー」
とまーちゃんに声をかけて。
「言われなくても分かってるわよ」
あとから、まーちゃんのそんな言葉が聞こえた。
何が何だかわからない私は、ただただそのやり取りをキョロキョロと頭を動かしながら聞いているしかなくて。
「……どうした、の?高橋くん?」