簪彼女。


そして、異変は思っていたよりも早く訪れた。


ううん、こんなことなら……気づかなきゃ良かった、まーちゃんや高橋君に助けて貰ったままでいたほうが傷付かなくて良かった。



そんなことを思ってしまう私は、とても弱い。


ホームルームも終わって、さて帰ろうかなんて教科書を取ろうと机の中に手を入れた時。



「いたっ……!?」



何か、鋭利な物が私の指を切った。


反射的に手を引いて。



ぷつりと切れた皮膚から赤い血がぷっくりと出てきていて、怖かった。


へんなの、簪と同じ色なのに。


そんな事を思ったのも束の間、私は机の中を覗いてみる。



「え、」



そこには、入れた記憶のないカッターが、刃を剥き出しにして有った。



取ろうとした教科書にはぽたりと血が落ちていて、泣きたくなる。


心臓の音が、不快に早くなる。


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