簪彼女。

03



もやもやとしたものを抱えたまま、帰り道では運動部の掛け声を遠くに聞きながら家への帰路を辿る。


けれど、考えては止まって、歩いて、また考えては止まって――……
全然、進んではくれない。



そんな時だった。



「ねぇ」



ふと、知らない声に呼び止められて、私は振り替える。



そこには、長い髪をさらりと風に靡かせた、美人さんが立っていた。


よくよく見ればそれは同学年で高橋君と並んで大人気の、安斉未来(あんざいみく)ちゃん。



なんで私なんかに声かけたんだろうと思っていれば。



「貴女が赤松雪?」



可愛らしく首を傾げてツカツカと歩み寄る未来ちゃん。



「え、は、はい」



その雰囲気がなんだかただならぬものを纏っていて、どもってしまう。



「ふぅん……」



近付くだけ近付いた後、じろじろと此方を見てくる未来ちゃんに何も言えなくて。



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