簪彼女。
固まっていること数秒、信じられない言葉を聞いて私は思わず目を剥いた。
「おどおどしてるし、別段可愛い訳でもないし?て言うかぜーったい私のほうが可愛い。広君の隣にふさわしいのは私のほうでしょ、ねえ」
……今、とても低い声で私に話しかけてきている可愛い子は、だあれ?
「あーあ、だめだめよ。あんたみたいな不細工が広君の隣に立たないで」
チクン、と胸の奥が痛む。
「万が一にも広君があんたの事を好きになることはないんだよ?」
針が、深く深くまで突き刺さって行くみたい。
どんどん痛くなってくる。
「ペンキ被って気を引くだなんて御苦労様なことね」
そんなんじゃ、ないのに。
「広君のジャージ着れるなんてラッキーだったよねぇ?」