簪彼女。
そう言いながら、赤い簪を拾い上げる未来ちゃん。
私は必死にすがるように手を伸ばして。
「やめ、返し、て……!」
その手に触れるのも嫌だと言うように一歩後ろに引いた未来ちゃんは、ふんと鼻で笑った。
「返す?やぁよ。さっき言ったじゃない、貴女より私がつけてたほうが綺麗。似合ってる。だから、これは今日から私の~!」
「やっ、未来ちゃ、」
「うるさい!私の名前を呼ばないで!」
「っ、……!」
ビックリして、肩が跳ねた。
私の簪をぎゅうと握り締めて。
一度怒鳴った未来ちゃんは、何事もなかったように踵を返しては後ろ手に手を振る。