簪彼女。
さりげなく重ねられた手から、高橋君の体温が伝わってくる。
ドキドキと高鳴る鼓動が間違って伝わりませんようにって、片手を胸元に添えておいた。
高橋くんは、こういうの緊張しないのかな?
……慣れてる、とか。
そう思ってしまうとなんだか悲しくなって、一人で気持ちが沈んでしまって。
「赤松?」
「………、え?」
「なんか、表情が暗い。もしかして、歩くの早かった?」
高橋くんに気を使わせてしまった。
焦った私はブンブンと首を振って、その動きが面白かったのか吹き出す声が聞こえる。
「プッ。赤松、それやべぇって。んな激しく振ったら簪取れちまうだろ?」
「っ、」
ドキ、と一際大きく、それでいて先程とは違う鼓動の高鳴り。