せーの、で忘れてね



あ‥住吉、笑いながらも、また小刻みに震えてる。



「あんた、寒いの? 前も震えてたよ? ちゃんと上着きなよ。 もう真冬なんだから」



「寒くないよー」



「手も鼻も真っ赤だから」


「牧山も、鼻赤いよ~」


「いいんだよ、あたしの鼻は。 とりあえずこれしてなよ。 そんなんじゃ震えるのもムリないよ」



あたしはしていたマフラーと、首にかけていた耳当てを押し付けた。



「ありがと~ あったかい‥‥」



「もうすぐさ、成人式だよね。 なんか、あっという間だったね」


「え? 何、ごめんよく聞こえない」



住吉が耳当てを外して首にかけようとする。



「や、なんでもない。 いいよ、まだ耳当てしてて」



いいよ。


せめてこのマフラーをしてる短い時間だけは、結婚のことなんか忘れててよ。




‥って、あたしが話しちゃったんだけど。





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