せーの、で忘れてね
どっちが早いか
「さぶー!!! 牧山あけおめー!」
「あけおめー」
ようやく住吉もコート着るようになったか。
でも、今年の寒さは尋常じゃない。
ありえんくらい寒い。
鼻水出てくるし。
まだ正月気分も覚めてないっつーのに7日から学校なんて、大学教師も困ったモンだ。
「もー!! 寒い! 寒い! 鼻、とれる!」
「あ、牧山。 お年玉‥じゃないんだけど、前に借りてたヤツ」
住吉があたしの爪のあとのついた手のひらを開かせて、そこに野口英世を2人置いた。
「ああ」
忘れてた。
財布忘れたって言ったときに、1000円貸してたんだっけ。
「いいよ、利子つけて返せなんて、本気にしなくてよかったんだよ」