せーの、で忘れてね



あたしたちは中学からずっと一緒だから、もちろん成人式の会場も同じ。



「えっ‥いーの?」


「だってお前、振袖だろ?」


「うん‥」


「歩くんじゃ遠いだろ? 車は運転できないだろ、崩れちゃうし。 あ、親御さんが車出してくれる?」


「や‥‥」



出してくれるつもりだったけど‥‥



「住吉がいいなら、迎えに来て」



「うん、わかった」



あー、またその笑顔。



住吉はもっとあたしのこと、警戒した方がいいよ?



ていうか、あたしのこと「そういう目で見れない」なら、もっと突き放した方がいい。



あたしみたいな女は、来るかもしれないチャンスを狙って、弱味ににつけこめるの待ってるんだよ?



もしかしたら


もしかしたら


って


可能性は0なのに、1があると信じてひとりよがりを繰り返す。





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