せーの、で忘れてね
「‥さぶっ」
あたしは、2人が見えなくなるまで背中を見ていたらしく、我に返ってぶるっと震えた。
そもそも、あたしが頼んだのがいけなかったんだ。
あの日、住吉に
レポートが終わんないからさ、ちょっとあたしの分のパンも買ってきて、って。
住吉方向オンチだからまだ慣れないキャンパスで迷って、そいで伊久さんに聞いたんでしょ?
親切な人が道教えてくれたーって笑ってさ。
あんた、女子となんか話せないクセにさ。
だからあたしは、嬉しかったよ。
あたしと話してくれるようになって、嬉しかった。