せーの、で忘れてね
「あー、牧山。 よかった、牧山がいた。 あのさー住吉見なかった?」
「あ‥アッキー」
アッキーとは人使いが荒いことで有名な数学教師で
成績が極端にいい住吉と、極端にワルいあたしのことをよく覚えている。
「あーさっきまで一緒にいたんですけど‥なんか取り込んじゃったっぽくて、さっき別れて‥どこ行ったのかまでは‥」
「そうかー。 あいつに頼みたいことあったんだけどな、ま、いっか。 牧山、ちょっと来い~」
「ハぁ? ヤだよ、あたし!」
「大丈夫だから、大丈夫だから」
何が大丈夫なんだよ、もー‥
アッキーに捕まると、数学の深い世界の魅力を延々語られて、気が狂いそうになる。
住吉はアタマいいから多少は分かるみたいだけど、あたしにとってはただの暗号だ。