せーの、で忘れてね
「あれれ、タイミング合っちゃうね~」
「そうですね‥」
伊久さんとは、タイミングが合っちゃうというか、間が悪いというか。
会いたくないときに会っちゃったり、1日に何度も何度も会っちゃったり。
「牧山ちゃん、話しちゃってたんだね、すーちゃんに」
「え? あ‥はい、すんません」
ああ、そうそう、ケッコンの話ね。
伊久さんがあたしの隣に座ってくる。
「まあ、いいんだけどね。 あたしも牧山ちゃんに話したときに、口止めしたけど、心のどっかではすーちゃんに話してほしいって、思ってたのかも」
‥‥やられた。
そう思った。
こう言えばあたしの罪悪感を強調できるし
もし本心で言わないでほしいと思っていたとしても、強がりはきちんと隠せてる。
本当に、この人はいつまで経っても攻略できない。
住吉はきっと、こういうとこが好きなんだろうけど。