せーの、で忘れてね
「牧山ちゃん、悪役なんだってね」
「はは‥いや‥‥」
「そういうことする人がいてくれるのも、きっといいことなのよね。 人生ほど曖昧なものはないんだから」
ホラ、‥‥また。
「‥‥‥‥」
「前に牧山ちゃんにもう言っちゃったから話すけど、結婚ね、日取りまできまっちゃってるの」
「え‥‥」
いつの間に。
もう、決定したんだ。
「ヨーロッパで親族招待して挙式することにしたんだけどね、挙式は4月なの。 だから、進学する前には行っちゃうから、今日、先生方にも挨拶してきた」
「向こうに行くのは‥‥挙式が終わってからなんですか?」
あたしは寒さで動きがトロくなった口を必死で動かす。
「ううん。 挙式より前にちょっとは生活安定させたいし、行くのは挙式前なの。 次の日曜に飛行機とれたから、それで行こうかなと思って」
‥‥うそでしょ。