せーの、で忘れてね


住吉は車で来たから、お酒を飲まない。


だけどそうじゃないあたしは、勧められるがままにイヤイヤお酒も飲んでる。



ちょっと‥‥飲みすぎるとヤバいな。



そう感じてきた頃だった。



飛行機の出発まで、あと2時間半。



「あーちょっと俺、トイレ行ってくる」



同じテーブルにいた住吉が席を外す。



あたしはほんの少しタイムラグを入れて、化粧を直してくると言って住吉を探した。



ゆっくりと駐車場に近づく。



本当に、トイレだけでありますように‥‥


住吉が空港に向かっていませんように。



これでもし住吉が黙って抜けて空港に行っていたら、あたしの7年間は本当にムダになる。


そうなってくれた方が、いっそのこといいのかもしれない。


うじうじ悩むより、そうやってスッパリ諦めきれる、何かがあった方が。




でも、やっぱりイヤだ。




住吉の車が、ありますように。





< 27 / 45 >

この作品をシェア

pagetop