せーの、で忘れてね
住吉は車で来たから、お酒を飲まない。
だけどそうじゃないあたしは、勧められるがままにイヤイヤお酒も飲んでる。
ちょっと‥‥飲みすぎるとヤバいな。
そう感じてきた頃だった。
飛行機の出発まで、あと2時間半。
「あーちょっと俺、トイレ行ってくる」
同じテーブルにいた住吉が席を外す。
あたしはほんの少しタイムラグを入れて、化粧を直してくると言って住吉を探した。
ゆっくりと駐車場に近づく。
本当に、トイレだけでありますように‥‥
住吉が空港に向かっていませんように。
これでもし住吉が黙って抜けて空港に行っていたら、あたしの7年間は本当にムダになる。
そうなってくれた方が、いっそのこといいのかもしれない。
うじうじ悩むより、そうやってスッパリ諦めきれる、何かがあった方が。
でも、やっぱりイヤだ。
住吉の車が、ありますように。