せーの、で忘れてね
「わ‥‥どしたの、牧山あ、ビックリしたじゃん」
5分程して、住吉は何事もなかったかのように車から出てきて
駐車場の柱の近くに黙って立っていたあたしにびっくりしていた。
「伊久さん‥‥なんだって?」
「わーはは、バレてたかー。 流石は牧山だよね、そういう計画とかはどこまでも完璧」
‥だから答えになってないって。
「ホラ、風邪ひくよ? 寒いっしょ?」
そういうはぐらかしはもう、たくさんだよ。
「行くよ。 キー貸して」
「え‥は? どこに‥?」
あたしは住吉の手からキーを奪うと、エンジンをかけて助手席に乗り込む。
「ちょ‥牧山‥どこ行くのさ」
「空港に決まってるでしょ、おとなしく早く車出しして!」
「あ、運転は俺なのね」
「そりゃー、だってあたしお酒飲んじゃってるもん!」