せーの、で忘れてね
きえないで
ポーン‥
「目的地まで‥あと、10キロ、です」
静かな車内に、さっきからナビの声だけが何度も響く。
冷静になってみたら‥なんてことしてんだ、あたし!
だってこれ、完全に応援してるよね?住吉のこと。
住吉と、伊久さんのこと。
「ていうかさ‥」
開いた口が重い。
「伊久さん、空港で旦那さんも一緒じゃないの? あ、旦那さんっていうか‥旦那未遂? あれ、未遂って‥違うか」
「ぶっ」
あたしが一人言のようにぶつぶつ呟く隣で、住吉が吹き出した。
「旦那はもう行ってて、向こうの空港で迎えに来るんだって。 さっき言ってた」
さっき‥ねえ。
電話で‥‥ね。