せーの、で忘れてね
どさっと荷物を置くと、住吉は足早に去っていった。
ばか、寒くて肩震えてんじゃん。 もっとあったかいの着込めよ
住吉の後ろ姿に、あたしはそうつぶやく。
帰り道にある美術部の部室が空いていたので、さりげなく覗いてみると
デッサンをしていた伊久さんと目が合ってしまった。
「あ、牧山ちゃん」
「あ‥‥ども」
やべ。
気まず‥‥
「どうしたの? すーちゃんなら今日は来てないけど‥」
「ああ‥ハイ」
知ってます。
今さっきまで一緒いたんで。
「いや‥伊久さんもうすぐ‥就職ですね~‥なんつって」
混乱したあたしは適当に口走る。
「そんなこと?」
あー、この笑顔がイヤだ。