君のすべてが見たかった

普段はどんな理由を付けても“今は忙しいから”と却下される有給が、3年前、社内でインフルエンザが蔓延して3分の2のスタッフがダウンするという壊滅的な事態に見舞われてからは、会社はインフルエンザだけには有無をいわずに届けにハンコを押した。


俺は苦しむのはイヤだったから、早めに特効薬を飲んだので、それでも三日三晩熱に浮かされ、あっちとこっちを行き来した。


高熱時に見る夢は、一旦覚めて見ると“なんであんなにうなされたんだ?”と思うぐらい意味不明な物だったが、それでも恐怖感はしっかり残り、もう寝たくないと思うのにまた引きずりこまれていく。


その繰り返しからやっとで解放されるとソロソロと思考回路も働き始めたのが4日めの事。


―しかし案外、人間って丈夫だな。


前の3日間を一人で乗り切った俺をスゴいと思った。



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