君のすべてが見たかった

ここには、コンビニはもちろん、スーパーさえもない。


車を30分程走らせて、地元の農家の人達が共同販売する“取れたて野菜”の販売所があるのみだ。


山小屋には電気がないので、もちろん冷蔵庫もない。


肉や魚は買っても保存出来ないので、野菜中心に二人は選んで行った。


「見て!ケイ。人参の葉っぱってこんなに長いよ。」


「うんスゴいね。ミチ。大根もヒゲがたくさん生えてるよ。」


取れたての野菜たちは、ありのままの姿で売られていたので、ミチとケイは一つ一つの野菜たちに感嘆の声を上げた。


本当にそこは二人に取って“宝の倉庫”だった。


『曲がったきゅうり』


『泥のついたじゃがいも』


『穴の開いたキャベツ』


すべてが新鮮で安心な暮らしが息づいている。




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