君のすべてが見たかった
ミチはその患部の毒を吸いだしては吐き、吸っては吐きを繰り返して綺麗にした。
―こういうやり方を誰かに習っただろうか……?
ここでは、人間の生きる為の本能が自然と働きだすようだ。
ミチはまだ血が止まらないケイの指先を口に含んで吸い続けた。
今度は吐くのではなく、それを吸っていると懐かしい記憶が蘇る。
―かつて私も母の乳を吸い、生命を分け与えてもらった。
家族でキャンプに行った時には、河原で怪我をした私の指を父が吸ってくれた。
――遠い、遠い記憶。
それが自然と蘇り、今こうして愛しい人の一部を口に含んでいる行為につながっている。
ミチはなんだかせつない気持ちになって泣き出してしまった。
ケイはそれでも吸う事を止めないミチの頭を優しく撫で続けていた。
―――――――――――