君のすべてが見たかった
しかし逢えるのは、彼女の仕事の区切りがついた時だけだった。
彼女は特殊な仕事をしていて、一旦プロジェクトが始まると、最初は定時で帰れる事もあるのだが、日を追う毎に忙しくなっていって、完成間近になると日付が変わって帰宅するようになる。
そして遂には通勤時間さえ惜しいと会社に泊まり込み、仮眠のみの激務をこなす。
その分、プロジェクトが終わると次の仕事まで1〜2週間の休暇が与えられるが、彼女はその内、半分をそれまでの睡眠不足を取り戻そうと泥のように眠る。
そして、冬眠から目覚めた熊のごとく、まず彼女からの電話の第一声は必ず“ウォー”っと吠えるのだった。
それから俺達は、普通の恋人たちのようにデートを重ねる。
でも時々、遠距離恋愛なんじゃないか!?
と錯覚する程、俺達の距離は近くて遠い。
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