君のすべてが見たかった
――多分、インフルエンザだ。
熱はかなり高そうだ。
俺が……俺が移したんだ。
早く病院に連れて行かなきゃ!!
ケイはこの何もない暮らしの中で、突然見まわれたアクシデントに激しく動揺していた。
「ミチ、水飲めるか?」
ミチが何も反応しないので、ケイは水を含むとミチに口移しで飲ませてやった。
かなり喉が乾いていたのだろう……。
ミチは何度も薄く唇を開いて、それを求めてきたので、ケイにはそれが、親鳥の運んでくる餌を待ちわびる雛鳥のような弱々しさに思えて胸が痛くなった。
ミチが唇をブルブルと震わせる度に
「助けて……」
と言われているようで、もうこれ以上ココには居られないと決意した。
「ミチ、山を降りよう。」
ケイがそう決めてミチに伝えた。
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