君のすべてが見たかった
ケイが衣類をバッグに詰め、キッチンの鍋や食器を段ボールに戻しかけて、ふと手を止めた。
――鍋や食器はまた来るなら置いておいても良いだろう。
しかし、このまま嫌がるミチを強引に連れて帰って、また再び、二人でここに来る事があるのか……!?
不便で何もない生活を望んでここに来たのに、それが急病の為とはいえ、俺は逃げている…?
ミチは逃げてないのに…
俺は逃げている。
そう、気付いたケイは片付けをする手を完全に止めてミチの下に向かった。
「ミチ、もう一度聞くけど、本当に帰らないんだね?」
ミチは深くハッキリと頷いた。
「判った。俺も逃げないよ」
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