初雪メモリー[BL]
「……まあ、過ぎてしまった事は仕方ないです。さっさと着替えてご飯にしましょう。月花も待っていますし」

「ああ……」


この事があったからなのか折角のご飯もあまり食べられず、

外は景色が遠くも見えない位に真っ白で。これじゃあ、雪にはしゃいで遊ぶ子供もいないだろう。

こんな誰も外に出ないような天気の日くらい、ババ様の頼みであってもすっぽかして欲しい。


「早く帰ってこいよ」


せめてこの雪が激しさを増す前に。






夜になっても海理は帰って来なかった。

雪はまだ降り続いているが昼よりはその激しさはなく。静かに黒を白に染めるかのように降っていた。

海理は帰って来なかったのに、代わりに帰って来たのは哉(さい)だった。

哉は海理が遠出をする時に護衛をする一番の責任者……確か。その哉が白い梟姿のまま、掘りごたつの布団に放り込まれている。

何で彼が此処にいるのかと言うと……それは遡る事一時間ほど前。

物音がして玄関まで行った月花が、雪に埋もれている梟姿の哉を発見した。

海理は一緒ではなかった理由はまだ分からない。何故なら哉はまだぬくぬく温まり中だから。


「海理と一緒じゃないって、おかしいだろ!?」


哉が喋る気力を戻すまで分からないが、俺は気が気じゃなかった。

もしかして何処かで遭難して哉が助けを求めにやって来たのかもしれないとか、らしくもない事を考えてしまう。
< 11 / 18 >

この作品をシェア

pagetop