初雪メモリー[BL]
「でもそれでしたら、哉はすぐにそれを話すと思いますけれど」


それもそうだけどさ。何でそう冷静でいられるんだ? まだその可能性だって零ではないのに。

あまりに無神経すぎるように聞こえ、苛立ちも増し、思わず雪の胸倉を掴もうとしたその時だ。


《ふぅ~……温まった……》

「哉!!」


何も状況を知らず、まるで風呂から上がったかのように暢気に哉がこたつ布団から出てきた。

早速海理の事を聞き出そうとしたかったのに、哉は腹が減ったと言いだし、今日の夕ご飯の残りを差し出されると一気にそれを平らげた。

本当に暢気すぎて呆れそうだ。


《ええと、なんでしたっけ?》

「哉。何時までもとぼけた真似をすると、彩十さんが暴走しかねない」

《ああ、それは失礼。長なら心配はない。仲間の鳥達からも、埋もれた直後に無事を聞いたので》


哉曰く、雪が少しだけおさまった時突風が吹き荒れそれに自分は吹き飛ばされ、偶然にもこの屋敷の玄関前に落ちたらしい。

流石にかなり離れた位置から此処まで吹き飛ばされるのは有り得ないだろうから、海理もすぐそこまでいるだろう。

……良かった、何もなくて。思わず大きな安堵のため息を漏らした。
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