奥さんに、片想い



「美佳子、僕だけど。うん、今日はコンサルの彼等と河野君と……そう、またバッティングセンター。あはは、うん、上手くならないけどはまってる!」

 え、また河野君とでかけるんだ。いつもの愛妻コールを聞いて知った途端だった。

「おつかれーっす!」

 ビリッと身体中が震撼する程のあの元気な声。

「きたきた、河野さん」
「課長も終わったところですよ」
「わあ、丁度良かった。俺も慌てて片づけてきたところ」

 若い彼等と河野君が和気藹々。大きな身体の彼に、いまどきスリムな彼等が輪になっていると、少しばかり年上の河野君が妙に頼りがいありそうな兄貴に見えたりして不思議。

「またせたね。行こうか」

 綺麗に片づいたデスク、椅子にかけていたジャケットを手に取った佐川課長も、もうすっかり満面の笑み。
 どうやら河野君と二人だけで行っていたバッティングセンターに、若い彼等も連れて行くことになっているようだった。

 男四人、本当に楽しそう。河野君も違う部署なのに、すごく馴染んでいる。

 四人が仲良くコンサル室を出ていこうとする背中を眺めつつ、男同士の時間に水を差すと躊躇ったのだが千夏は決する。


「待って! 私も連れて行ってください!」


 手を挙げて彼等を引き留める。一斉に振り返った彼等が、河野君ですら目を丸くして驚いている。

 なのに。佐川課長だけが意味深な笑みをニンマリ。
 何もかも見透かされているようだった。
 それでもいい。千夏はそう思っている。

 

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