奥さんに、片想い
そこで、熊君が『にんまり』。勝ち誇った顔を見せたので、千夏は我に返る。
しまった、またやられた! この男にまた『ひっかけられた』!
「千夏さんって。ほんと真面目。隠れ乙女だよね。男は絶対に浮気しちゃだめって憤慨するタイプ」
「そ、そんなの当たり前じゃない。どの女性だって思っていることじゃないっ」
「横恋慕や不倫が許せないって正義感。千夏さんの弱点だよね」
「弱点じゃないわよ!」
いや、弱点だった。
それでやり方を間違えて『悪者』になって遠回りをしてきたから。
それを孝太郎にも告白して『貴方とは付き合えない』と言ったこともあったから、ほんとうにほんとうにこの年下彼氏には『千夏の全て』を握られているから、困ってしまう。
「俺がそんなこと出来る男じゃないってわかっているでしょう? なのにマジになって『そんなことダメ』て言うんだから、よっぽど弱点ってことだよ。だって俺、千夏さんを捕まえるだけでもいっぱいいっぱいだったのに。本当に本当に好きでたまらない女をやっと捕まえたんですよっ。他の女性なんて、興味もないっすよ」
でたーでたっ。熊君、無意識の女の子を喜ばせちゃう文句が……。
そんな彼だから、千夏は大人しく降参して箸を持つ。
「レバー、食べる」
「うんうん。だめっすよ。ちゃんと食べないと。千夏さんたら『あれ』が終わった後、真っ先に寝落ちしちゃうんだから」
『あれ』がまた何かわかって、千夏は再び噴き出しそうになる。
「ちょっと。もういい加減にしてよ」
「俺、困っているんですよ。もっとじっくり話したいのに。千夏さんたら、俺を放ってさっさと寝ちゃって。『イタズラ』しても起きないし」
「い、いたずらって……なに……、それっ」
また熊君がニンマリ。