奥さんに、片想い



 すごく気に入っていたのに。
 ここで一人でのんびりと昼休みを過ごすこと。

 ある日、この彼に見つかってから、あまり安心できる場所ではなくなってしまった。

「落合主任。もう、食べ終わったんですか」
「ええ。帰るところ」
「一緒に食べたかったなあ」

 彼の手にはコンビニのレジ袋。
 そこに幕の内弁当がちらっと見えたのだが。なんとその他に、おにぎりが三つと唐揚げパックも入っていてギョッとしてしまった。

「それ、お昼なの。それともおやつとか夜食ってこと」

 彼がバツが悪そうに短い黒髪をかいた。

「ぜんぶ昼飯ですよ」

 すごいっ。
 思わずそう漏らし、素直に驚いて彼の顔をつい見てしまった。
 目が合い、彼が嬉しそうににっこり微笑み返してくれる。
 本当に嬉しそうに。やっと俺を見てくれたとばかりに。

「この身体でしょ、俺。すっごい食べるんですよ。イメージ通りってよく言われます」

 彼は本当に大きい。身長はゆうに180センチはあると思う。
 千夏の目線からだと確実に見上げてしまう。
 身体もがっしりしていて、見るからに学生時代はスポーツをしていたと窺える体つき。
 だからって木偶の坊みたいにぼやっとしているわけじゃなく、ゆったりしているわけでもなく、先程あっという間にここに来たように俊敏でキビキビしている。

「前から思っていたけど。なにかスポーツしていたの?」

 にまーっと、いつも以上に口角をあげ頬を緩めた彼の笑み。千夏はやや後ずさり……なんだか嫌な予感。

「やっと俺に興味を持ってくれましたか!」

 うざっ。早速そんな言い方!
 すぐそう思うなんて、なんだかストレートすぎ。



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