奥さんに、片想い
「ここらあたりにはなかったけど、今日外回りで出かけた先のコンビニにはあったからお土産に」
「……いいの?」
「もちろん。俺は甘いのは苦手っすから。最初から主任に食べてもらおうと思って」
また彼がにこっと笑う。
「あ、ありがとう。頂きます」
さらににこっにこっと満足そうに微笑む彼。
そこに邪気はひとつもない。
まっすぐに千夏を見て、裏表なく千夏の為にしたことで千夏が喜ぶことを喜んでいる――。
嘘じゃない笑顔だと信じられる。彼はそういう人。
流石に、その笑顔には千夏も釘付けになってしまっていた。
でも。だからこそ。素直になれない。
まっすぐすぎて。綺麗すぎて。近寄りがたいという感覚。
この感覚、誰かわかってくれるだろうか?
―◆・◆・◆・◆・◆―
まだ昼休みの時間は残っているが、千夏はそのままコンサル室へと戻る。
最近の大ヒット商品と謳われているコンビニ発『季節限定、生チョコ』。
春は苺、五月の連休は抹茶味が出ていた。そして今回はミント。
冷やして食べるのが美味しいから、コンサル室に戻った千夏は冷蔵庫がある給湯室へと向かう。
するとそこでコンサル室の男の子が二人、お客様接待後の湯飲みを洗っているところだった。
「おかえりなさい、主任」
「もうお昼も終わったんですか」
『まあね』と答え、冷蔵庫を開けようとする。そこではたと思いだしたことを、彼等に言う。
「だんだん暑くなってきたから、冷たい麦茶を用意しておこうと思うのよ。後で買ってきておいて」