夜光虫
オレの車が睦美さんのアパートに着くと、


「私、やっぱり仕事辞めようと思う」


と睦美さんが俯きながら蚊の泣くような声で言った。


「今回のことで人間不信になっちゃったし・・・」


膝の上で拳を握り締め、震える声で言った。


「何でそんなこと言うの!?」


オレは思わず睦美さんを抱きしめていた。


「オレが水筒頼んだからオレにも責任がある。オレが付いてるから・・・、だから辞めるなんて言わないで!」


「皐月ちゃん・・・」


「お願いだから・・・」


オレは祈るような思いで目を閉じた。


「分かった。辞めない」
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