夜光虫
腕の中の睦美さんは泣きながら笑顔を作って答えた。


睦美さんはオレよりも身長が低かった。


眼鏡の奥の涙を拭ってやった。


「睦美さんトロいし要領悪いから、ここ辞めたらどこも雇ってくれないよ~。残った方がいいって、絶対」


オレがホッとして言うと、睦美さんも「そうだね」と笑ってくれた。


その日は、睦美さんの涙が止まるまでオレがずっと抱きしめていた。


全然嫌じゃなかった。




こうして睦美さんは、また毎日オレと一緒に仕事に行っている。


睦美さんは元気を取り戻したけど、今度はオレがおかしくなったようだ。


オフ会に参加しても、女の子とメアドを交換したり遊ばなくなった。


掲示板は興味が無くなって見ていない。
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