夜光虫
果歩みたいな素敵な人が今後あたしの前に現れるかも分からない。


あんなに楽しみにしていた同棲だったのに、今は正直どうでもいい。


どうしてこんなに上手くいかないんだろうー。


果歩もあたしも公務員で安定していて、女二人でも老後も安心して暮らせるはずだった。


“パーフェクトカップル”と呼ばれているあたし達だけど、全然完璧じゃない。


些細な問題なら目をつぶるけど、あたしにとって“子供”というのはとても大きな問題だった。


もうどうしたらいいのか、どうしたら自分のことを納得させられるのか全然分からなかった。


あたしが妥協すべきなんだろうか。


誰か教えて欲しいー。


自分の部屋のベッドに座り込むあたしの目に飛び込んできたのは、果歩から貰ったペアリングだった。


それは右手の薬指でキラキラと輝いていた。
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