夜光虫
「そりゃ変な男に引っかかるよりはよっぽどマシだけど・・・」


私達の勤める大手電機メーカーは山形でも有名だった。


しかも雫には今一緒に住んでお世話になっているので、母も強くは言えなかったのかもしれない。


「とりあえずお父さんには話すから」


私は一人っ子なのでそうなるとは思っていた。


父も母も私をとても大切にしてくれていた。


「ところで雫さんって5区の宮野さんの娘だろう?母親は知ってるのかね?」


「雫は誰にも話してないから、お母さんも余計なことを言うのはやめて!」


「分かったよ・・・」


うちの両親はそういったことを簡単に喋るような人達ではなかった。


私が両親に私達のことを打ち明けたと知ったら、雫はどんな反応をするだろう?


これは一種の賭けだった。
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