【短編】或るOLの憂鬱~セクシャルハラスメント



この男はいつもそうだ。


普段は紳士面しているが、酒が入ればわたしの太ももをさすりながら、下ネタを連発する。


昨日の新年会もそうだった。


職場の雰囲気を壊したくないから、あれはお酒の席での出来事だから、と、わたしはひたすら黙っているけれど、あなたはわたしに「最低」の烙印(らくいん)を押されている。


「片桐さん」


最低男、基、課長がパソコンに目をやりながらわたしの名を呼ぶ。


「はい」


「まだ、セクハラ研修受けていなかったよね?今日の午後、行ける?」


「大丈夫です。行ってきます」


わたしは淡々と答えた。


セクハラ研修受けてきてね、と、あなたに言われたくない。


昨日の課長の醜態を録画して教材に使えば、何がいけないのか一目瞭然だ。


今度の飲み会では、隠し撮りしてやろうかと、一瞬本気で思った。

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