【短編】或るOLの憂鬱~セクシャルハラスメント
主任は、わたしが新採当時からお世話になっている人で、見るからに爽やかな男性だった。
そして良きパパ、良き夫であるようで、先日も息子さんの保育園の運動会の話を楽しそうにしていた。
爽やかでかつ家族を大切にする主任は、女性からの支持が高かった。
わたしは、書庫にずらりと並ぶ綴りを見上げながら、背表紙を目で追いかけた。
違う、違う、違う……これも違う……
その時。
自分の視界に突然主任の顔が飛び込んできたので、わたしは思わず声をあげそうになった。
わたしを捕らえたその視線に、一瞬恐怖を感じたが、すぐに目を細めてくれたので、わたしはほっとした。
「片桐さんって、かわいいよね」
そう言うと、主任は屈託ない笑顔を向けた。