【短編】或るOLの憂鬱~セクシャルハラスメント


「君が欲しいんだけど、いいかな」


わたしは一瞬自分の耳を疑った。


この人はいったい何を言っているの?


頭が真っ白になりそうだったが、わたしは体中のエネルギーを顔の筋肉に手繰り寄せ、精一杯のぎこちない笑顔を作った。


「そ、それは、まずいでしょう」


逃げなければ。


なんとかして、逃げなければ。


主任越しに扉に目をやる。


ダメだ。


あそこまで行けない。


そもそも、この腕を振り払えない。


大声を出そうか。


ダメだ。


そんなことをしたら、明日から職場に来られなくなる。


どうしよう。


どうしよう、どうしよう!!

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