【短編】或るOLの憂鬱~セクシャルハラスメント
すると、わたしの肩を掴んでいた主任の手は、するりと抜け落ちた。
そして、
「冗談冗談。ごめんごめん」
と、また屈託ない笑顔をわたしに向けた。
「さてさて。探そうか」
と言いながら、何事もなかったかのように再び書類を探し始めた。
わたしは呆気にとられて、息をするのを忘れていた。
そして、とっさに、はい、と言って、半ば無意識に再び書類を探し始めた。
よかった。
助かった。
犯されるかと思った。
ちらりと、主任に目をやる。
主任はひたすら書類を探していた。
わたしは書類を探すフリをするのがやっとで、頭の中は完全に放心状態だった。
ただ一つだけ、明確だったのは、一秒でも早くこの場から逃げ去りたい、ということだった。