【短編】或るOLの憂鬱~セクシャルハラスメント
しかし、どうやって逃げ出そう。
まだ書類も見つかっていないし。
突然、途中で帰ったら怪しまれる。
また、何か嫌なことをされたらどうしよう。
仕返しされたらどうしよう。
どうしよう!
散々悩んだ挙句。
「はい、もしもし、はい。……ああ、そうですか。はい……わかりました。すぐに行きます」
と、携帯片手に小芝居をして、さも誰かに呼び出されたフリをした。
「すみません。ちょっと急用みたいなので失礼します」
と、誰の何の急用かも告げずに、わたしは一方的に頭を下げて書庫を出た。