【短編】或るOLの憂鬱~セクシャルハラスメント
書庫を出たわたしは、一目散に逃げた。
さっきの出来事を振り払おうと、全速力で廊下を走った。
『君が欲しいんだけど、いいかな』
主任の低い声が頭の中でこだまする。
やめて、やめて、やめてやめてやめて!!
頭を何度も横に振った。
全速力で廊下の角を曲がると、スーツ姿の男性と正面衝突してしまった。
男性の持っていた書類が宙を舞う。
「ごめん。大丈夫?」
申し訳なさそうな男性の声が後方から聞こえた。
しかし、わたしは男性に謝ることも、宙に舞ってしまった書類を一緒に拾うこともできなかった。
それよりも、また男性に触れてしまった嫌悪感でいっぱいで、ひたすらその場から逃げた。