かよちゃん。
ぐい、ぐいと手を引かれ
どんどん文字が近くなる
「えーっと、はらだー、はらだー」
自分の名字を呪文のように唱えながら進む舞
心なしか、周りの子が道をあけてくれている気がする。
ああ、ごめんなさい…
一番前まで来た舞はぴたりと止まると、また呪文を唱えだした
「はらだー、はらだー、」
慌てて自分のも探す
…
…見つからない。
自分の名前だから簡単に見付かると思ったけど、そう上手くはいかない。
「はらだー、はらだー、はら…んっ、みっけ!」
どうやら舞は見つかったらしい。私も急いで探さなく…っおおおおおお!!!?
『ええっ!?舞、舞っ!??』
私の腕は前を行く舞に掴まれたまま、引きずられるように進んでいく
『わたっ、し!まだっ、まだだよ!?ちょ、待って!!』
片足で踏ん張って舞を止めようと試みるものの、細いくせに力は強いから止まらない。
「あれ、まだだったの?」
舞の足は止まらない
『そうっ!そうなの…!!』
「まあ、いいよ」
なんですと!!?
『舞さん、本当に、私見なきゃ!後々困ると思うんだ!ほら…!色々と!』
「別に、大丈夫だよ。だって、かよ
あたしと同じ2組だし。」
止まる舞
止まる私
『え…?』
「何、嫌なの」
したり顔で舞が笑う
『……な、何それ、そんなわけないけど!!!…え、本当に?』
「何なら見に行く?正直、面倒くさいけど」
『や…いい、私も面倒くさい。…なんだぁ、よかったあ。もう、びっくりした!』
「あははっ、悪いね」
そうこうしているうちに
3-2のプレートが見えてきた。
広い校内だ、きっと初めて出会う子もいるだろう
けど、このクラスで卒業式を迎えるんだと思うと、いいクラスになることを願わずにはいられない。
「かよ、行くよー」
けど、スタートは
このイタズラ好きな、友人と同じクラスになれたことで、良い方向から、迎えられたのではないかと思う。