†穢れなき小鳥の殺し方†
「あの」
「なに?」
「ご飯、食べますか?」
「・・・・・・」
確かに和香はキッチンに立ってて、その手元からは湯気が見えた。
そこからは確かに食べ物の匂いがしてて・・・・・・。
「なに、それ」
「あ、チャーハンです」
「・・・・・・・」
昨日と同じじゃねぇか。
「えと、材料がそれしかないので・・・・・・」
俺の考えを読み取ったのか、和香はそう言ってそれを皿によそった。
「・・・・・・米、洗剤で洗ったのか?」
「いえ、ちゃんと水で」
「卵の殻が入ってるとか」
「昨日、家で練習して何とかちゃんと割れるようになったんです」
「焦げまくりとか」
「それは・・・・・・、ちょっとだけ」
そういいつつもテーブルに置かれたモノはちゃんと『食べ物』だった。
そして、指先には絆創膏。
俺の視線に気づいたのか、和香はすぐに自分の手を引っ込めて。
「あのっ、えと、これは昨日やったっていうか、今日じゃないしちゃんと血も止まってるんで――」
なんて口にするから、俺は「どうでもいい」と言ってソファに。
置かれたスプーンを手にして一口食べてみる。
「・・・・・・」
「・・・・・・あの」
「水」
「えっ?」
「水、持って来いっつったの」
そう言うと和香は、
「――はい!」
と答えてコップに水を入れてきた。
初めて作ったであろうチャーハンは、
『普通』としか言いようの無い出来だった。