†穢れなき小鳥の殺し方†
別に和香との約束を守って遙香と連絡をとって無かったわけじゃない。
待ってたんだ。
この電話を。
「お願いだから・・・・・・」
震える声に懇願するような瞳。
そうそう、
そうでないと。
20秒ほどなり続けて、俺の携帯は沈黙を取り戻す。
和香はホッとするように肩を落として――。
「――っ!」
だけど、また同じ音楽を奏で始めた。
あんだけ優しくしてやったんだ。
簡単に諦められたら意味が無いだろう?
鳴り響く着信音にビクッと震える和香の肩。
「どうしよっかなぁ、これって仕事なんだよね」
「お願いしますっ、出ないで!」
和香の手から落ちたスプーンが床で跳ねた。
「なら・・・・・・」
あぁ、これからの事を考えると楽しくてたまんねぇよな、和香。
「出ろよ」
「えっ?」
俺の台詞があまりに予想外だったのか、和香の目が大きく開かれる。
「俺が出て困るなら、お前が出て断れ」
「・・・・・・」
「嫌なら――」
俺が通話ボタンを押そうとすると、
「まっ、待って!」
その声に俺は薄く笑みを浮かべて、
「どうぞ」
と携帯を差し出した。