†穢れなき小鳥の殺し方†

震える指先が俺の携帯に触れる。

その手は前のように手入れはされてなくて、爪も磨かれてはいなかった。


「早く出ろよ」


俺の声にビクつきながらも恐る恐る通話ボタンを押して――


『ショウ?どうして出ないのよ』


携帯が和香の耳に届く前に、遙香のヒステリックな声が漏れた。


『ちょっと、聞いてる?折角私が美味しいディナーに誘ってあげようとしてるのに』


どこまでも上から目線の女。

その相手が娘だって分かったらどうなんだろうな?

笑いを堪えるのも限界があんだよ。


『ショウ?』


異変に気づいたのか、遙香の声色が変わる。

そして、


「・・・・・・ママ」


和香の声に息を呑む遙香の声が聞こえてきそうだった。

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