†穢れなき小鳥の殺し方†
少し前、
コーヒーを入れればそれを俺が口にするまで和香は傍に立っていた。
「普通」と口にするまで。
土日、和香の作る料理のレパートリーは増えていた。
見たことの無い料理を眺めていると、
「うちにくるお手伝いさんに教えてもらったんです。多分、同じように出来たと思うんですけど」
と少し不安そうに首を傾げてた。
それを俺が口にして、
「水」
と言うまで俺の顔をじっと見ていた。
その料理のレパートリーも引越しをしてから増えることは無かった。
和香は毎日同じようにやってきて帰っていく。
俺が飲んだコーヒーカップは、次の日にはちゃんと棚に戻される。
寝る前に投げ捨てたスーツも、次の日にはハンガーにかけられる。
なにをどうしたいのか。
分からないまま日々過ごす。
それが俺の日常になっていた。