†穢れなき小鳥の殺し方†
東の空が薄っすらと白くなるころ、
やっと開放されてタクシーに乗った。
マンションに帰ってドアを開ける。
部屋に明かりは無い。
だけど、
「・・・・・・おかえりなさい」
暗がりの中、和香はソファから立ち上がってそう言った。
俺は彼女の寝顔を知らない。
きっと俺のいない間じゃないと眠れないんだろう。
いつものように俺の脱ぎ捨てたスーツをハンガーにかける和香。
だから俺もいつものように、
「来いよ――」
そう口にする。
俺の声に逆らいもせず和香は近づいてくる。
まるで操り人形のように。
そして、俺は彼女をベッドに組み敷いて、
抱いた。
いつものように、
キスはしない。
愛撫もない、
だけど今日は一度だけ、
「和香・・・・・・」
名前を呼んでみた。
けれど、
和香が俺の名前を呼ぶことは無い。
そして、
彼女の瞳は俺ではなく、
闇の中に消え入りそうな三日月を映していた。