俺様王子の初恋
「 なんかあった? 」
「 ・・・・何も、ないです 」
「 そんな顔してないだろ 」
肩に回された佐野くんの手には
痛いほど力が込められていて
思わず顔をしかめた。
「 葵ちゃん 」
「 ・・・・やっ・・! 」
呼ばれて、顔を上げると
佐野くんはズイッと顔を近づけてきて
反射的に私は顔を背けた。
「 ねぇ、さっき葵ちゃんがいた所
俺行きたいんだけど 」
「 ・・・・ 」
「 何度か行ったんだけどさ、鍵が
かかってて入れないんだよね 」
私は、鍵を持ち歩いているけど
鍵を開けて入ったことはあまりない。