俺様王子の初恋
泣き顔
9月上旬の、温い風を感じながら
騒がしい教室の中から一人、窓の外を
眺めていた。
「 学園祭の出し物ですが、 」
二週間後には、学園祭がある。
今はクラスの出し物を決める時間。
横目で黒板を見ると、”メイド喫茶”に
二重丸がつけられていた。
・・・・超定番。
視線をもう一度窓の外に向けた。
グラウンドの向こうに見える
旧校舎を見つけた。
───────・・・あの後、
逃げ出した私を追いかけてきたのは
彼の声だけだった。
訳も分からずに溢れ出した涙を
制服の袖で何度も拭って、
頼まれていた書類のことも忘れて
鞄も持たずに帰った。