C'est la vie!
泡のような疑問が浮かんでは消える。
パチン
何かがはじけて目の前が拓けた。
セラヴィの香りが漂ってきて、あたしは鼻をひくつかせた。
視界がクリアになって、あのお屋敷の景色がよみがえる。
まぶしすぎるほどの煌びやかで鮮やかな景色。
それはあの古びて色や光を失った廃屋敷と違った。
キラキラと細かい粒子の白い輝きを放つ、大きなシャンデリア。
きれいな縁を描く階段の手すりは落ち着いた色合いのゴールド。紅い絨毯はいかにも高級そうだ。
階段の踊り場には絵画が飾ってある。
命を失ったお屋敷の―――これが本来の姿。
くすくすっ
小さな笑い声が聞こえてきて、あたしは耳を傾けた。
「Henry」
誰かがヘンリーさんを呼んでる。
女の人の声だ。
見上げると、シャンデリアの光の中女の人の姿が幻想的に浮かびあがった。
階段の踊り場でその人は黒い長い髪を揺らして、男の人を手招きしている。
きれいな―――人だった。
男の人の足音が近づいてくる。
踊り場から続く応接間の両開きの扉を両手でゆっくり開いて現れたのは―――
やっぱり
クロウさんだった。