C'est la vie!
トンっ
レイは私の胸に日記を押し付けると、
「話はそれだけです」と言って身を翻した。
「待ちなさい」
私は立ち去っていくレイを呼び止め、彼がゆっくりと振り返る。
「アスミがどうなろうと、君には関係ないことだろう?」
レイが少しだけ表情を歪める。
「関係―――……ある」
「どうして?」
私がやんわりと問いかけると、レイは少し困ったように頭に手を置いた。
「どうして、って。だって彼女は俺の大事なモップだから…」
「モップとは君が可愛がってたペットだろう?」
「そうだけど…結城さんはモップみたいだし…」
「理由になってないな。アスミは犬でもなければペットでもない。
彼女はいつだって強い意思を持って、君を助け、ときには導き―――ときに傷ついた君を癒してくれた。
君は気付いているはずだ。
いまや彼女がペット以上の存在に成り代わっているのを」
「………」
レイは目を開いてその場で固まった。
やっぱり―――自覚してなかったのか。
人の気持ちにも鈍感だが、自分の気持ちに対しても鈍感だな。
私はそんなレイに畳み掛けるようさらに続けた。
「私に渡したくないと思うのは、君の嫉妬心からだ」
「…違う…」
レイが弱々しく否定する。
「違わなくない。君はこの屋敷で彼女と過ごすうちに、君自信が彼女に惹かれはじめたんだ」
「…違う!!!」