C'est la vie!
足りないもの
―――どれぐらい経っただろう。
いつもは眠くなる時間帯だろうに、眠気は一向にやってこなかった。
「ねぇ……零くん……」
ぽつりと聞いて、隣で眠る零くんの方を伺うと、零くんはあたしに背中を向けていて僅かに身じろぎした。
でも起きだしてくる気配はないし、返事もなかった。
寝ちゃったのかな―――…
訝しく思って身を起こし、ちょっとだけ零くんを覗き込むと、零くんは寝てはいなかった。
ただ睨むように真剣な目で壁を見つめ、口元を引き結んでいる。
聞こえなかったのかな…
「……零くん…?」
もう一度零くんを呼ぶと、零くんは今度こそゆっくりと目を閉じて眠ったフリ(?)をした。
あたしも覗きこんだ顔を引っ込めて、零くんに背を向けてごろりと横になる。
どうしよう……
どうしよう…!零くん完全に怒っちゃったよ…!
どうしよう
――――
――
零くん怒っちゃったよ……
「しくしくしく……」
まるで女幽霊のすすり泣きのような声をあげながら…
いや、実際半分幽霊なんだけどね。
古びたバスルームのバスタブで膝を抱えて、泣いているところに
シャッ
ぼろぼろになって半分朽ちたカーテンを引いて、クロウさんが呆れたように顔を出した。